キリスト教の葬儀にする注意点
キリスト教の葬儀は、まず神父や牧師とよく相談し、指示を受けることが大事です。キリスト教の葬儀にした場合、菩提寺の関連で問題がおきることがあります。キリスト教の葬儀に慣れている葬儀社は多くないので、キリスト教の葬儀を得意としている葬儀社に依頼することが大事です。
目次
キリスト教での葬儀
キリスト教での葬儀は、葬儀全体の割合からすると、それほど多くの方が利用している葬儀のかたちではありません。
そのため、キリスト教の葬儀に慣れている葬儀社も多くないということになります。
キリスト教での葬儀をスムーズに行えますよう、注意していただきたい点などをこれから説明させていただきます。
キリスト教で葬儀を行う場合、原則として、カトリック教会では生前に洗礼を受けた人しか受け付けませんので、葬儀は故人が属した教会で行うことが多いです。一方、プロテスタント教会では、親族が信者なら、故人が信者でなくても受け入れてくれる場合があります。また、強い要望があれば、遺族や親族が信者でなくても受け入れてくれることもあります。
キリスト教での葬儀を要望する人や家族は、「菩提寺はないけれど、葬儀にお経がないと淋しいなどで仏式の葬儀を選択する」などのような消極的理由によるものではなく、おおかた積極的な理由によるものですから、葬儀の内容は、懇意にしている神父や牧師がいれば、 よく相談されるとよいでしょう。
故人様だけが信仰していた場合は、それを叶えてあげたいというのが人情ですし、葬儀もそれに従いキリスト教式にするのがよいと思われますが、この場合でも、ご家族が懇意にしている神父や牧師がいれば、よく相談されるとよいでしょう。
キリスト教の葬儀に適した斎場
キリスト教での葬儀の場合、カトリックでは故人が所属していた教会で葬儀を行う事が多いようですが、プロテスタントの場合は通っている教会があれば、教会で行う事もありますし、自宅や斎場を使う場合があります。
斎場を使う場合、市営斎場などの公営のものや、寺院や民間が管理する貸式場、葬儀社が自社で保有している自社斎場などがありますが、キリスト教での葬儀の場合、使用できない斎場があります。
市営斎場や公営の斎場の場合は、宗旨宗派問わずに使用できますので、キリスト教での葬儀で利用することは可能です。また、民間の斎場や葬儀社の自社会館なども宗旨宗派を問わず利用できますので、問題なく利用することができます。
一方、キリスト教での葬儀の場合に利用できない、または利用しづらい斎場として、お寺が保有している貸式場が挙げられます。
たとえば、西東京市にある総持寺大日堂斎場は総持寺の葬儀会館で宗旨宗派を問わず利用することができるため、キリスト教の葬儀でも利用することができますが、斎場がお寺の境内にあるため、外の雰囲気はキリスト教には合わないかもしれません。また、台東区にある寛永寺では既成仏教及び神道・無宗教のみの対応であるため、キリスト教での葬儀で利用することはできません。
このように、家の近くや近隣の方がよく使っている斎場を使いたいと思っていても、キリスト教での葬儀では使えない場合があります。
キリスト教の葬儀で気を付けるべきこと
キリスト教での葬儀については、家族ぐるみで信仰をしていれば問題はおきないかもしれませんが、故人様だけがその信仰を持っていたような場合は、少し面倒になることもあります。
たとえば、菩提寺があり、そこに納骨するという場合です。この場合、菩提寺から戒名をもらわないと納骨させてもらえないということが起こります。 菩提寺である寺院墓地は檀家制度によって寺院を維持している宗教集団なので、檀家になることが条件で納骨できるというわけです。
故人様の信仰を尊重し、キリスト教で葬儀を行うということになれば、お墓は違うところに設ける必要が出てくることになります。もしくは、故人には悪いけれども葬儀そのものをキリスト教にしないというように、遺族が現実的な選択をするかもしれません。こうした問題には正解はありませんので、故人様の生前の遺志をからめて、関係者による合意如何によります。
もちろん、納骨先が菩提寺ではなく、公営墓地や宗教不問の民間墓地であれば何の問題もおきません。
キリスト教での家族葬や直葬、一日葬
家族葬というと特別なことをすると思っている人もいますが、家族葬とは、家族・親族などのごく近い関係の方だけで送る葬儀という意味のものなので、キリスト教でも家族葬は行えますし、葬儀の流れもキリスト教式で行われます。
また、近年、葬儀一般において、直葬や一日葬の割合が増えていることに伴って、「できるだけ費用を抑えたい」、「親戚が皆高齢なので二日間葬儀に参列してもらうことが困難」、「本人が生前に火葬するだけでいいと言っていた」…など、いろいろな事情から、キリスト教の葬儀の場合でも、直葬や一日葬を希望される方が増えていますが、キリスト教では、本来仏式の葬儀でいう「通夜」のようなことは行ないません。
日本では日本の葬儀の風習に添うかたちで、告別式の前日に通夜(カトリックでは「通夜の祈り」、プロテスタントでは「前夜式」と呼びます)が行われていますが、本来、キリスト教の葬儀式は告別式のみで行われるものですので、一日葬や直葬を希望した場合でも特に問題はありません。
キリスト教での葬儀の流れ
キリスト教にはカトリックとプロテスタントがありますが、ここでは故人が信仰していなくてもキリスト教での葬儀を行う事ができるプロテスタントでの葬儀の基本的な流れを紹介します。
また、葬儀式中の細かな流れではなく、ご相談でよくご質問をいただく、危篤・臨終から葬儀終了までのご喪家の目線での流れを説明いたします。
キリスト教での葬儀の流れ(プロテスタント例)
危篤/臨終葬儀社へ依頼 | 危篤状態の段階に牧師に来て頂き、牧師が信者にパンとワインを与えて家族とともに祈ります。 臨終の後は、脱脂綿などを使って水で故人の唇を濡らす「死水をとる」と呼ばれる儀式を行います。 この段階で葬儀社へ依頼の連絡をします。 葬儀依頼の際は、必ずキリスト教式で行う事を伝えましょう。 |
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搬送/納棺/安置 | 葬儀社(寝台車)がお迎えに行き、安置する場所まで搬送し、ご納棺、ご安置となります。 基本的には、納棺は牧師・家族の立ち合いの元で行われます。 |
葬儀打ち合わせ見積書作成 | 葬儀日時の決定や葬儀についての説明が行われ、葬儀見積書を作成してもらいます。見積書は必ず書面で受け取りましょう。 |
前夜式 | 仏式でいう「通夜」にあたります。 牧師に来て頂き、讃美歌の斉唱や聖書の朗読、お祈り、感話(故人をしのんだ話し)、献花が行われます。 |
葬儀・告別式 | オルガンの演奏、聖書の朗読、弔辞・弔電の紹介、お祈り、献花が行われます。 |
火葬 | 「火葬前式」で、牧師が聖書の朗読をし、お祈り、讃美歌の斉唱が行われ、火葬となります。 |
なお、キリスト教での一日葬の場合には、「通夜式」を行わないだけで、そのほかの流れは二日間の葬儀と同様です。
キリスト教の葬儀に慣れている葬儀社は多くない
葬儀全体に占めるキリスト教での葬儀の施行割合が少ないということは、キリスト教の葬儀に慣れている葬儀社も当然少ないということです。よりよい葬儀にするためには、キリスト教の葬儀を得意としているところに依頼することが大事です。
近年、都市部では老人ホームや介護施設で最期を迎える方も多くなってきました。施設などでは他に入居されている方への気遣いなどから、牧師や神父を呼ぶことが難しいこともあるようです。また、自宅に安置が出来ない場合は安置所を利用しますが、安置所によっては納棺してある状態になっていないと受け付けてもらえないところもあるため、キリスト教での大切な儀式ではあっても、状況によっては上に書いた「キリスト教葬儀の流れ」の通りに行う事ができない場合がでてきます。
上記のような、牧師や神父、ご家族、葬儀社で調整をする必要がでてきたときに、キリスト教での葬儀に慣れている葬儀社であれば、牧師や神父ともうまく調整をとり、臨機応変に対応することができます。
また、式の流れは牧師や神父の進行によって進められますので、式中は葬儀社は裏方に徹することが求められます。式は葬儀社中心に組み立てるものだと思い込んでいるようなところは避けたほうがいいでしょう。